振り込んでください詐欺


詐欺師(不問):
電話相手(不問):

※:電話相手の口調は俺ですが、私に変えてくださっても大丈夫です。




電話相手 それは、ある日の事。
     家でのんびりとしていた、
     他愛もない、いつもの一日だった。

詐欺師  プルルルル〜 プルルルル〜

電話相手 ん?電話?……知らない番号だな。
     …誰だろう…とりあえず出るか。
     はい、もしもし?

詐欺師  あ、もしもし?
     オレだよオレ。

電話相手 オレさん?

詐欺師  ……そうそう!
     オレだよ!覚えてる?

電話相手 覚えてる覚えてる!
     いやぁー…懐かしいな。
     よく番号知ってたな。
     大学上がるときに変えちゃって知らない筈なのに…。

詐欺師  実は、お前の母親に聞いたんだよ!
     わからなくなっているから…頼み込んでな。

電話相手 へー…そうなのか。
     あ、そうだ!覚えてるか?高校の頃に、一緒に校舎の窓と言う窓を割った時の事!
     あの後、犯人が誰だか分からず結局見つからなかったじゃんか。
     今思い出しても笑えるよなー!

詐欺師  …そ、そうだよなー。
     まさか、お前があんなに割るなんて思わなかった―……。

電話相手 (遮るように)まあ、嘘だけど。

詐欺師  って、嘘かよ!!

電話相手 嘘に決まってるじゃん。
     てか、あんた誰?

詐欺師  え……だ、だからオレだよ!

電話相手 知らないよ。
     てか、これオレオレ詐欺って言うんだよね?
     あんまりこういう事は辞めたほうがいいですよ。

詐欺師  ギクッ………プチッ。

電話相手 ん?……切れた。
     ふー…変な人もいたもんだ。

詐欺師  プルルルル〜 プルルルル〜

電話相手 …って、また電話?
     ……まさか、さっきの人じゃないよな?
     …はい、もしもし。

詐欺師  もしもし?私だよ。
     わ〜た〜…。

電話相手 (遮るように)ワタシさんなんて人は知りません。プチッ。
     ……まったく、諦めの悪い詐欺だな…。

詐欺師  プルルルル〜 プルルルル〜

電話相手 って……また!?
     ……今度は違う人、今度こそ違う人…。
     …はい、もしも…。

詐欺師  (遮るように)どもー!
     ピザバットです!
     注文していたアンチョビバーターピザお届けにまいりまし……。

電話相手 (遮るように)頼んでないんで大丈夫ですー。
     ふー……って、またか!?
     …はい、もしもし?

詐欺師  あんたんとこの息子を預かった。
     返してほしくば、身代金として一千万用意し……。

電話相手 (遮るように)うちに息子も娘もいませーん。
     …っと………って…またか。
     もう、とことん付き合ってやる。
     もしもし…。

詐欺師  おばあちゃんだよ……元気にしているかい…。

電話相手 (遮るように)うちのおばあちゃんはもう10年前に亡くなっていまーす。

詐欺師  クソッ……もう、回復魔法を使うMPも金も残ってない……。
     君……!助けてくれ…。

電話相手 (遮るように)すいませんがMP無いんで、ほかの人にお願いしまーす。

詐欺師  いつもニコニコあなたの近くに這い寄るこんとん……。

電話相手 (遮るように)這い寄らなくていいです♪

詐欺師  僕とお金で契約して魔法しょ…。

電話相手 (遮るように)うち、一家に魔法少女いるんで間に合ってまーす。

詐欺師  YO!YO!君…お金払ってくれな……。

電話相手 (遮るように)DJに知り合いなんていないYO。

詐欺師  ドモ、外国人デス…道ニ迷ッテ、オ金落トシタ。
     助ケテホシ……。

電話相手 (遮るように)外人さんチッスチッス。

詐欺師  私は誰?貴方はいったい……。

電話相手 (遮るように)知りません。

詐欺師  …………プチッ。

電話相手 お?……終わったかな?
     ふー…しつこい振込み詐欺だったな…ってか、あれは詐欺なのか?

詐欺師  プルルルル〜 プルルルル〜

電話相手 って、また電話!?
     ……はぁ…これで最後にするか。
     …はい、もしもし。

詐欺師  あ、先ほどはどうも。

電話相手 あ、どうもどうも…。
     それで、ご用件はいったい?

詐欺師  はい、お金振り込んでください。

電話相手 嫌です。

詐欺師  何で!?

電話相手 むしろ逆に何で!?
     …普通振り込むわけないだろ?

詐欺師  いやいや、普通は振込みますよ!
     まったく…世間に疎いんですね。

電話相手 何だろう……殴りたくなってきた。

詐欺師  ってわけで、お願いします。

電話相手 いやいや、払わないから!!

詐欺師  何で!?

電話相手 だから何で!?

詐欺師  普通は振込み……。

電話相手 (遮るように)いや、ループするからもういいよ。

詐欺師  そうですか…。
     と言うわけで、振り込んでくださいお願いします。

電話相手 いや、だから無理ですって…。

詐欺師  お願いします!!
     ほんの一千万でいいんで!!!

電話相手 いや、それほんのじゃないから!?

詐欺師  (嫌味ったらしくため息)はぁ……ったく使えねぇ。
     じゃあ、半分の五百万でいいよ。
     これで、ババアの手術代払えるから…。

電話相手 何で悪態付かれているのかよくわからないんだけど!?
     何?俺が悪いの?これって俺が悪いの?

詐欺師  お願いします!!
     その半分の二百五十万でいいから!!!

電話相手 …ん…?さっき五百万って言ってたけど…二百五十万で足りるの?

詐欺師  …………。

電話相手 …………。

詐欺師  お願いします!!
     その半分の二百五十万でいいから!!!
     でないと…ババア…(咳払い)……お母さまの手術代が払えな……。

電話相手 都合の悪いことはスルーかい!!

詐欺師  はぁ…まったく…ピーチクパーチク…。
     うるさいなぁ……。

電話相手 何だろう……言われも無いことで非難されてる。

詐欺師  わかりました…じゃあ、頭を下げます。
     百万でいいです。
     いや、百万にさせてください!お願いします!!

電話相手 頭を下げるなんて……わかりました!
     百万ならお支払いしま……って、するわけないだろ!?

詐欺師  チッ。

電話相手 そして、露骨に舌打ち!?
     いったい何なんだろう…この詐欺…。
     もう、わけがわからない。

詐欺師  それじゃあ、百万円お願いしますね。

電話相手 いや、了承してないから!?
     俺「はい」とか言ってないからね?

詐欺師  グレイの日本語表記は?

電話相手 灰

詐欺師  それじゃあ、「はい」を貰えたので、
     百万円お願いしま……。

電話相手 (遮るように)いやいや!!
     おかしいでしょ!?俺、灰って言っただけで、
     「はい」なんて頷いてないよ!?

詐欺師  聞いている人は「はい」と「灰」の違いなんてわかってないから大丈夫だ。

電話相手 聞いている人なんているの!?

詐欺師  多分いるんじゃないんですか…?

電話相手 電話で話しているのに…?

詐欺師  多分…?

電話相手 そ、そっか……。

詐欺師  それじゃあ、とりあえずこの口座に百万円お願いします。

電話相手 ……いや、いやいや!
     だから、振り込みませんって…。

詐欺師  そうですか……わかりました。

電話相手 よかった…やっとわかってくれたんですね。

詐欺師  半分の五十万円ならいいんだと……。

電話相手 わかってないじゃん!!

詐欺師  皆は、こんな詐欺師にひっかからないようにね!

電話相手 ちょ、いつのまに俺が詐欺師になっているの!?

詐欺師  それじゃあ、皆またね!

電話相手 あ、やっと切れた……。
     はぁ……本当、いったいなんだったんだ……ん?メール?
     なになに…。

詐欺師  「ここの口座に五十万円よろしくね☆」

電話相手 って、払うかぁぁああああああああああああ!!!!

詐欺師  よい子の皆はこんな事はしちゃダメだぞ♪

電話相手 終われ!!

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